えも覚えてい

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「お袋のことはわかってるのか」
「わかる時もあるし、わからない時もある。おかあさんだと思ってる時もあるし……。この前は春美のことを自分の奥さんだと思ってた」
 そんなことを話している間、章一郎は縁側鑽石能量水に座って、ぼんやりと空を見ていた。二人の話は耳に入っていないようだった。その彼の指先は真っ赤だった。どうしたのかと昭夫が訊くと、政恵はこう答えた。
「お化粧ごっこをしたのよ」
「お化粧ごっこ?」
「私の化粧品をいじったらしいわ。口紅でいたずらして、指があんなふうになったの。小さい子供と一緒」
 政恵によれば、幼児退行の症状を示す時もあるし、突然正常になる時もあるのだという。確実なことは、おそろしく記憶力が低下していることだった。自分のやったことさないのだという。
 そういう人間と一緒に暮らすということがどういうことか、昭夫には想像もつかなかった。ただ、政恵の苦労が並大抵でないということだけはわかった。
「大変なんてものじゃないわよ」春美と二人で会った時、彼女鑽石能量水は険《けわ》しい顔をして昭夫にいった。「前にあたしが行った時、お父さんが暴れてたの。おかあさんのことをすごく怒ってた。見ると、部屋が荒らされてるの。押入の中のものが引っ張り出されて、そこらじゅうに散らばってた。お父さんは、自分が大切にしてた時計がない、おまえが盗んだんだろうっておかあさんを責めてるわけ」
「時計?」
「ずいぶん前に故障したからってお父さん自身が捨てたものよ。そういっても納得しない。あれがないと出かけられないといってだだをこねるの」
「出かけるって?」
「学校、といってたけど、何のことかはあたしにもおかあさんにもわからない。だけどね、そういう場合でも逆らってはいけないの。時計は探しておきますといって、ようやく落ち着かせたわ。学校へは明日行鑽石能量水けばいいでしょうといって聞かせた」
 昭夫は沈黙した。とても自分の父親の話だとは思えなかった。



責任能力があ

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 刑事たちが庭で何を話しているのか、昭夫にはまるで見当がつかなかった。今さら庭で何を調べようというのか。自分たちの話した内容を改Dream beauty pro 好唔好めて振り返り、刑事たちに疑念を抱かせる材料がなかったかどうかを確かめてみたが、特に矛盾があるとは思えなかった。殺したのがじつは政恵ではなく直巳なのだということ以外は、殆どすべて真実を話したつもりなのだ。
「あの人たち、何をしてるんだと思う?」八重子も同じ思いらしく不安そうに訊いてきた。
「わからん」昭夫は短く答えてから母親のほうを見た。
 政恵は背を向け、うずくまるように座っている。まるで石のように動かない。
 これでいい、こうするしかない──昭夫は再び自分にいい聞かせた。
 ひどいことをしているというのは、もちろん彼自身が一番よくわかっていた。息子の罪を隠蔽するためとはいえ、実の母親を身代わりにするなどというのは、人間のすることではない。仮に地獄というものが存在するなら、死後自分は必ずそこに落ちるだろうと彼は思った。
 だがこれ以外に今の窮地を脱する方Dream beauty pro 脫毛法が思いつかなかった。認知症の老婆が殺してしまったということになれば、世間の風当たりは幾分弱くなるだろう。高齢化社会が招いた悲劇だと解釈され、うまくすれば前原一家はかわいそうな家族だと受け取られるかもしれない。直巳の将来への悪影響も、最小限にとどめられそうな気がした。
 逆に真実をばらしてしまったらどうなるだろう。直巳は生涯、殺人者としてみられるに違いない。そして彼の両親は、息子の暴走を止められなかった馬鹿な人間と軽蔑され、非難され続けることになる。どこへ移り住もうと、誰かが必ずそのことを嗅《か》ぎつけ、前原一家を孤立させ、排除しようとするだろう。
 政恵には申し訳ないと思う。しかし彼女自身は、自分が| 陥 《おとしい》れられたことなどわからないはずだ。認知症の老人が罪を犯した場合に司法がどう機能するのか昭夫は知らなかったが、ふつうの人間と同じように刑罰が下されるとは思えなかった。責任能力、という言葉を昭夫は思い出していた。それのない人間は、罪に問われにくいという話を聞いたことがある。今の政恵にるとは誰もいわないだろう。
 それに政恵も、自分が身代わりになることで孫が救われるなら本望に違いない。それを理解することが出来ればの話だが──。
 玄関のドアが開閉される音が聞こえた。廊下を歩く足音が近づいてくる。
 お待たせしました、といっDream beauty pro 好唔好て松宮が部屋に入ってきた。加賀の姿はなかった。
「もう一人の刑事さんは?」昭夫は訊いた。
「別の場所に行っています。すぐに戻ってきます。ええと、ところで改めて伺いますが、事件のことを知っている方はほかにいますか」
 予想された質問だった。昭夫は用意しておいた答えを口に出すことにした。
「私たち二人だけです。誰にも話していません」
「でも息子さんがいらっしゃるでしょう。その方は?」



恐怖は感じな

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 闇に目が慣れるまで、しばらくそうしていた。やがて庭に広げられた黒いビニール袋がぼんやりと見えるようになってきた。昭夫は手袋をはめると、ガラス戸dermes 激光脫毛のクレセント錠を外した。
 畳んだ段ボール箱どガムテープ、さらに懐中電灯を持って、改めて庭に出た。暗闇の中で箱を組み立て、まず底の部分をガムテープで固定した。それから黒いビニール袋に目を向けた。
 緊張感と怯《おび》えが彼の身体を包んでいた。見えているのは少女の足先だけだ。まだ一度も死体の全身を正視していない。
 口の中がからからに乾いていた。逃げ出したいというのが本音だった。
 これまでに人間の死体を見たことがないわけではない。一番最近目にしたのは父親の遺体だ。その遺体を怖いとか気味悪いというふうには全く思わなかった。医師に室內設計よって死亡が確認された後も、その顔に触れることができた。
 ところが今は、その時の気持ちとはまるで違っていた。黒いビニール袋の盛り上がりを見ただけで足が震えた。それをめくる勇気が出なかった。
 死体がどんな様相を呈しているのかわからず、それを確かめるのが怖い──それはたしかにある。病死の場合は、息を引き取る前と後で、さほど大きな変化があるわけではない。死んでいるのかどうかさえ、ちょっと見ただけではわからないほどだ。だがここにある死体はそういうものではない。元気に遊んでいたに違いない少女が、突然殺されたのだ。首を絞められて殺されたのだ。そんな場合に死体がどうなるのか、昭夫は知らない。
 だが怖い理由はそれだけではない。
 もし警察に通報するのであれば、これほどのいはずだった。正当な理由のもとでなら、死体を段ボール箱に入れることも、さほど苦痛ではないと思えた。
 自分のやろうとしていることのあまりの非道徳さに怯えているのだ、と昭夫は気づいた。死体を見るということは、それをさらに露《あら》わにすることなのだ。
 遠くで車の走る音がした。それで我に返った。ぼんやりしServer Rackている場合ではなかった。こんなところを近所の人間に見られたら、それこそ元も子もない。
 いっそのこと、黒いビニール袋に包んだまま運ぼうか、と考えた。公園のトイレに置いたら、目をつぶってビニール袋をはがし、死体を見ないで戻ってくる。それならできそうだった。
 だがすぐに昭夫は小さく頭を振った。死体を確認しないわけにはいかなかった。死体にどんな痕跡《こんせき》が残っているかわからないからだ。直巳が手にかけたという証拠がどこかに残っている可能性も皆無ではない。
 やるしかないのだ、と彼は自分にいい聞かせた。どんなに非人道的であろうとも、家族を守るためにはほかに道はない。
 昭夫は深呼吸し、その場で屈んだ。黒いビニール袋の端を持ち、ゆっくりとめくっていった。